~コガネタケ編~

春の花見酒も終わり、新緑がまぶしい季節になってきた。

いつもの赤ちょうちんのお店では、今年も公園にゴザを敷いて盛り上がった花見の話をしている。

終わったばかりだが女将も「もちろん来年もやるから参加してね」先の話をしている。

「きのこ先生来年もよろしく!」と声を掛けられると、小生嫌いな方じゃないので一つ返事で了解を告げる。心の中で「まだ来年の話だけどな~」思うのであった。

いつもこの店で野生のきのこを見せると、ほとんどの人が「食べられるの?」と問いかけてくる。その時小生は「どんなキノコも食べられるが、二度と食べれなく(亡く)なるキノコ(猛毒🍄)もあるよ」と言って忠告しているが、反対に危ぶまれて失笑をかっていることも多い。今宵は道ばたのきのこの代表格「コガネタケ」に触れてみよう。

小生がコガネタケを最初に知ったのは、日本菌学会の休憩時間に道ばたで採ったという大量のコガネタケを理研キノコ党員からもらった時である。

早速、駅前の居酒屋に持ち込み土瓶蒸しで食味してみると、これが何と美味しいこと。以来、野外で実際に見てみたいと思うようになり、博士浪人をしている理研キノコ党員に頼む。

 

 数日後、最初に案内されたのが埼玉県の毛呂山町の小川の土手であった。その場所は子供たちが集団登校するために集まる場所のようである。早速探してみるが、コガネタケは一向に見つからなかった。

案内人いわく、この土手でコガネタケを採っていた時、不審人物として警察官に職務尋問をされたそうだが、最後に「良いきのこばかりではなく、毒きのこもあるよ。」と言ったらなぜか解放されたと言いながら笑った。結局その日は見つからなかった。

 

 次いで案内された場所が和光市の道路沿いに植えられた拓殖林の所である。しかし、時期が早かったのか小さい溶菌ばかりであった。

 数日後(自衛隊観閲式の前日)の夕方、もう出ているころと思い、その場所に行った。見るとニョキニョキといっぱい出ていた。すぐに頭の中に居酒屋で食べたコガネタケの土瓶蒸しが浮かんだ・・・そのコガネタケを手にして喜び勇んでの帰り道、道路を渡ったところで、いきなりジュラルミンの盾に囲まれた。大勢の子供たちが、捕り物劇宜しく集まってくるではないか!推察するに、爆薬などの危険物を道路沿いへ隠匿を警戒していたのであろうか?

 小生は、起動隊員の職務尋問に対して、コガネタケを採りに来た話をする。ここからは一方的なきのこ談義に入る。小生が採りにきたコガネタケは道ばたに生えるキノコであり、立ち小便など尿素の多い所を好む。しかし、松茸など菌根菌類は進化したキノコであり、木材の分解酵素がなくなり・・・栽培が難しい。などと、「ああだ・・・こうだ」いい加減なきのこ知識を披露して、なぜかジュラルミンの盾から解放された。

 

 この日は、結婚記念日で花屋に立ち寄る途中の出来事であった。他にもきのこ探索で早朝、曲がりくねった山道を乗用車でバックして下ってきたところをパトカーで警戒中の警官に職務質問された苦い経験もある。いずれにしても、コガネタケは小金盗(採)りではないが警官とご縁があるようだ。と言って吞み仲間と大笑いした。

 ふと酔いが回ってきたようだ。今宵はこれにて・・・店を背に後にした。「きのこ先生、今日もありがとう」の声が後ろから優しく聞こえる。  (徹)